【Intern Med誌:藤村寛之先生 他、The Evaluation of Transmural Healing by Low-dose Computed Tomography Enterography in Patients with Crohn’s Disease.】

 クローン病において内視鏡的粘膜治癒の達成を目指した治療戦略は、長期臨床的寛解を実現する治療目標として重要視されてきた。近年は、クローン病は腸管全層の炎症を認めることから、新たな治療標的として全層性治癒(Transmural healing; TH)が注目されているが、日本ではTHに関する臨床データはほとんどない。当院ではクローン病のモニタリング法として低被曝線量CTエンテログラフィ(CTE)を導入しており、CTEを用いたTH判定について検討した。
 当院でCTEを施行したクローン病患者のうち、50%被曝低減で造影50秒後に撮像し、かつ2週間以内に下部消化管内視鏡もしくはバルーン内視鏡を施行した122件を対象とした。放射線検査と内視鏡検査の結果をそれぞれ放射線科医と消化器内視鏡医が独立して検討し、CTEと内視鏡検査の診断の一致率を算出した。THの定義は3mm以上の壁肥厚、造影効果の増強、消化管合併症のいずれも認めないこととした。CTEは放射線科医2名が個別に最重症部位と所見を判定し、判定が異なった場合は別の放射線科医が最終判定を行った。内視鏡所見に関しては内視鏡専門医2名が最重症部位においてSES-CDの評価項目のうち、潰瘍の大きさについて判定した。内視鏡的粘膜治癒は0(潰瘍なし)もしくは1(アフタ様潰瘍)に該当する症例とした。結果として26名(21.3%)のクローン病患者がTHを達成し、カッパ係数は0.743と2人の放射線科医の間でかなりの一致がみられた。TH群と非TH群の比較では、クローン病活動指数、内視鏡的治癒率、血清アルブミン、血清CRPで有意差が認められた。122名の患者のうち、69名(56.5%)はCTEの診断と内視鏡検査が一致し、22名(18.0%)はTHと内視鏡の両方の治癒を達成した。本検討は被曝低減CTEを用いた日本におけるCDのリアルワールドデータを解析した稀少な研究である。本研究で用いたTHの判定基準はカッパ係数も高く、多くの施設で再現性が高く利用できるものと考えられる。

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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36244733/

(藤村 寛之)

PubMed論文掲載報告 ~Intern Med誌:筆頭著者 藤村寛之先生~
PubMed論文掲載報告 ~Intern Med誌:筆頭著者 藤村寛之先生~