PubMed論文掲載報告【Gastric Cancer誌 (IF7.37):五嶋敦史助教他、Cooperation between artificial intelligence and endoscopists for diagnosing invasion depth of early gastric cancer. Gastric Cancer. 2023 Jan;26(1):116-122.】
目的:胃癌の治療選択を決定する上で, 最も重要な基準は胃癌の胃壁深達度が粘膜内であるか, 粘膜下層に浸潤しているかの鑑別である. しかしながら, 早期胃癌に対する内視鏡観察や超音波内視鏡による深達度診断の性能は, 正診率が約70%と報告されている. 胃癌の深達度診断の能力を向上させる有用なモダリティーは近年も開発されておらず, 粘膜内癌と粘膜下層癌を鑑別する内視鏡AIも実臨床への導入に至っていない. 我々はディープラーニングを用いて, 胃の粘膜内癌と粘膜下層癌を鑑別する内視鏡AIを構築し, さらにAIと内視鏡医の合議に基づいた実際的な内視鏡AIの運用方法を確立するための検討を行った.
方法:山口大学医学部附属病院の上部消化管内視鏡検査から, 肉眼型が陥凹型を主体とする早期胃癌症例を抽出し, 粘膜内癌250例, 粘膜下層癌250例を訓練症例とした. 白色光画像を1枚ずつ選択し, 計500枚の訓練画像を作成した. また, 関連施設の粘膜内癌100例, 粘膜下層癌100例を抽出し, 同様に計200枚のテスト画像を作成した. ディープラーニングにEfficientnetB1モデルによる転移学習を併用して, 粘膜内癌と粘膜下層癌を診断する内視鏡AIを作成した. また内視鏡の経験年数が10年以上の内視鏡医4名と5年未満の内視鏡医4名にも訓練画像とテスト画像を診断させた. 実臨床でAIによる診断支援を医師がどのように活用するかを探求するため, AIの診断確度および内視鏡医の多数決による診断をそれぞれhigh-confidence, low-confidenceに分類し, それらの組み合わせで最も診断性能が高くなる合議の方法を検討した. 訓練画像で確立した診断方法に基づいて, テスト画像の診断能を評価した.
結果:訓練画像におけるAIと内視鏡医の正診率, 感度, 特異度, F1メジャーは, 粘膜下層癌を陽性としてAIが77%, 76%, 78%, 0.768,内視鏡医の平均が65.3%, 54.4%, 76.2%, 0.611でAIの成績が上回っていた. テスト画像におけるAI, 医師群, AIと内視鏡医の合議の正診率, 感度, 特異度, F1メジャーは, AIが72.5%, 74.0%, 71%, 0.729, 医師群が70.0%, 52.0%, 88.0%, 0.634, AIと内視鏡医の合議が78.0%, 76.0%, 80.0%, 0.776であった.
結論:胃癌の深達度診断を支援する内視鏡AIを実臨床で活用するため, AIと内視鏡医が合議する手法を考案した. AIは深達度を深く, 内視鏡医は浅く読む傾向にあるが, これらの診断特性を考慮して合議を検討した. AIと内視鏡医の合議により, それぞれ個別の診断能を上回り, AIが深達度診断を支援することの有用性と臨床応用における実用性を示した.
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36040575/
(五嶋 敦史)