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胆道・膵臓疾患

胆のう、胆管、膵臓とは?

胆管とは、肝臓で作られた胆汁という消化液を十二指腸に流すための管です。
胆のうとは、胆管にくっついている袋で、肝臓で作られた胆汁を貯めておくところです。
膵臓とは、胃のうしろにある臓器で、十二指腸にくっついています。食べ物を分解する膵液(消化酵素)をつくって十二指腸にだしたり、血糖を調整するインスリンなどのホルモンをつくって血液中にだしたりする臓器です。

胆道の病気

胆石症

もっとも頻度の高いもので、胆道(胆管・胆のう)に石ができる病気です。胆のう結石の多くは無症状で経過観察とされることが多いのですが、石が胆のうの狭いところに詰まったり、胆管に流れ落ちてきて、十二指腸乳頭部に詰まったりすることがあります。石がつまると右の肋骨の下あたりに激痛を感じます。

多くは、急性胆道炎を伴い、熱がでます。また、肝臓から十二指腸への胆汁の流れが障害されると、黄疸(眼球結膜:しろめの部分、皮膚、おしっこが黄色になります)がでます。膵液の出口を塞ぐと急性膵炎も起こります。
治療は、胆のう結石の場合は、外科手術(腹腔鏡下胆のう摘出術)が必要となるため、外科医と相談して治療を決めます。胆管結石の場合は、内視鏡(胃カメラみたいなもの)で取り除きます。

急性胆道炎(急性胆のう炎、急性胆管炎)

胆道に炎症を起こした状態で、原因の多くは胆石ですが、がんによる胆道狭窄(胆汁の流れ道が狭くなること)によっておこる場合もあります。発熱、悪心、嘔吐、腹痛(右の肋骨の下あたりの痛み)、黄疸(眼球結膜:しろめの部分、皮膚、おしっこが黄色になります)などの症状がでます。ひどい時には、意識障害やショックが起こり、緊急治療を行わないと生命に関わる状態に陥ることもあります。うっ滞した胆汁にバイ菌がついていますので、胆汁の流れをよくし、膿みの混ざった胆汁を出すための治療を行います。また、抗生剤(バイ菌を殺す薬)の点滴や内服治療を行い、炎症が落ち着くまで絶食で点滴をします。

治療は、胆汁の流れを良くするために、内視鏡を使って、胆汁の流れ道の狭い部分に細いチューブを入れたり、体の外から直接、胆のうや胆管にチューブを入れたりします。原因が胆石の場合は、胆石を取り除く治療を行います。

胆道腫瘍

胆道に出来た腫瘍(できもの)で治療の対象となるのは、主に悪性腫瘍(胆のうがん、胆管がん)です。良性腫瘍(ポリープなど)や、早期がんは無症状で、検診や他の病気の検査中、腫瘍以外の原因による腹部症状の検査中に見つかることがほとんどです。進行がんでは、黄疸(眼球結膜:しろめの部分、皮膚、おしっこが黄色になります)、腹痛、背部痛、食欲不振、全身倦怠感、腹部膨満感、むくみ、悪心、嘔吐、呼吸困難など病状の進行に応じて様々な症状がでます。血液検査、エコー、CT、MRI、内視鏡検査、PET検査などを組み合わせて診断し、病期・病状に応じた治療(外科手術、抗がん剤治療、放射線治療、緩和治療など)を行います。

膵臓の病気

急性膵炎

強い心窩部痛(胃の辺りの痛み)や背部痛(背中の痛み)が起こります。えびのように、体をまるめたくなるような痛みが特徴です。ほかに、発熱、悪心、嘔吐、食欲不振などの症状も起こりえます。
原因の大半は、アルコールか胆石です。
初期治療は、膵臓を安静にするために絶飲食とし、十分な点滴を行います。

明らかに胆石が原因の場合は状態に応じて胆石の除去を行います。急性膵炎は重症化してしまうと、他の重要臓器(肺や腎臓など)にも障害を及ぼし、生命に関わるため、重症度判定を行い、必要に応じて集中治療可能な高次医療施設で全身管理を行います。特に、重症膵炎の場合は発症から24時間以内(遅くとも48時間以内)に治療を開始する必要があります。治療薬を直接、膵臓を栄養する血管に流す治療(動注療法)や、持続的血液濾過透析(CHDF)などを行います。重症膵炎が落ち着いた後も、感染や仮性のう胞(膵臓のまわりの水がたまった袋)の治療が必要になることがあります。

慢性膵炎

膵臓が慢性的な障害を受けることで膵石ができ、線維化(もともとの膵臓の細胞が線維に置き換わり膵臓が硬くなる)がおこり、膵臓がやせてしまい、膵臓の機能が低下する病気です。無症状でひそかに進行していることもよくあります。
原因は、アルコールや特発性(原因不明)が大部分です。飲酒や膵液の流出障害などがきっかけで、急性膵炎(慢性膵炎の急性増悪)を起こすこともあります。

低下した膵機能の回復は困難ですから、今以上に膵臓を傷めないことが重要(特に禁酒)です。膵石や線維化によって膵液の流れが悪くなっているところがあれば、膵液の流れをよくするために石を取り除いたり、チューブをいれたりすることがありますが、これらの治療も今以上に膵機能を悪化させないための治療です。内科的治療が困難な場合は、外科手術を行うこともあります。

膵腫瘍

膵臓に腫瘍(できもの)ができたものです。良性、悪性、境界型の腫瘍があり、それぞれに応じた治療方針を決める必要があります。良性腫瘍の多くは、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)という、膵臓の中に水がたまった袋ができる病気で、多くは経過観
察可能です。悪性腫瘍の一部にはおとなしく、確実に治るがんもありますが、多くは膵管がんという進行の速い、たちの悪いがんです。

多くは、急性胆道炎を伴い、熱がでます。また、肝臓から十二指腸への胆汁の流れが障害されると、黄疸(眼球結膜:しろめの部分、皮膚、おしっこが黄色になります)がでます。膵液の出口を塞ぐと急性膵炎も起こります。
治療は、胆のう結石の場合は、外科手術(腹腔鏡下胆のう摘出術)が必要となるため、外科医と相談して治療を決めます。胆管結石の場合は、内視鏡(胃カメラみたいなもの)で取り除きます。

胆膵疾患領域の診断方法

腹部エコー

体の外から超音波をあてておなかの中の様子をみます。おなかにゼリーをつけてなでるだけで済む簡単な検査です。エコー用の造影剤を使って、肝臓への病気の広がりをみることもあります。エコー用の造影剤には副作用はほとんどありません。

膵がん症例

CT検査

数分間ベッドに横になっているだけの検査で、放射線を使っておなかの断層写真をとります。精密な診断のために基本的に造影剤を使いますが、アレルギーのある方や腎臓の病気のある方は造影剤を使えないこともあります。

造影CT検査で膵がん症例

MRI検査

40分くらい釜の中で寝ているだけの検査です。膵臓の中心を走っている膵管という管の形や肝臓と十二指腸をつなぐ胆管という管の形をみたり、MRI用の造影剤を使って、病変のひろがりをみたりします。体内に金属がはいっている方はこの検査ができません。刺青のある方はやけどをする可能性があります。アレルギーや腎臓の病気がある方は造影剤を使えないこともあります。

MRCP検査で膵がん症例

EUS(超音波内視鏡検査)

超音波内視鏡を使います。胃カメラのような検査です。胃・十二指腸から直接膵臓に超音波をあてて診断します。上記検査で分からないような小さな病変も検出できます。概ね30分前後の検査ですので、できるだけ楽に検査を受けられるように、鎮静剤(眠り薬)を使います。

膵がん症例

EUS-FNA(超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引細胞診・生検)

腫瘍が疑われる場合には、細胞検査用の超音波内視鏡を使って、細胞をとります。
胃カメラのようなものを使って、胃や十二指腸から直接膵臓に超音波をあてて、腫瘍を確認します。その腫瘍に向かって針(血液検査のときの針の太さくらいです)を刺
して細胞を採取します。針が刺さっても基本的には痛みはありません。

30分前後の検査ですので、できるだけ楽に検査を受けられるように、鎮静剤(眠り薬)を使います。基本的に検査後、少なくとも1泊は入院で様子をみます。検査結果は約1週間程度でわかります。

膵がん症例
病理組織

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査)

内視鏡を使って、十二指腸乳頭部から膵管や胆管に、直接造影剤を流してレントゲン写真をとります。管の狭いところから直接細胞を取ったり、管の狭い部分の流れをよくしたりする治療を行うことがあります。黄疸に対してよく行う治療です。30-60分前後の検査ですので、できるだけ楽に検査を受けられるように鎮静剤(眠り薬)を使います。

膵管造影で膵がん症例

PET

全身への病気の広がりを検査するために行うことがあります。

膵がん症例
膵がん症例

胆膵疾患の内科的治療法

内視鏡的胆道ドレナージ・内視鏡的膵管ドレナージ

石や腫瘍などによって、胆汁や膵液の流れを妨げているところに内視鏡を使ってチューブをおいて流れを良くする(ドレナージ)治療です。体内においてくる内瘻チューブ(ステント)と、鼻から(胆道または膵臓-十二指腸-胃-食道-咽頭-鼻腔-鼻孔へとおして)体外に出す外瘻チューブ(経鼻ドレナージ)があります。

内瘻チューブ(胆管ステント)
外瘻チューブ(経鼻胆管ドレナージチューブ)

胆管ドレナージチューブには体内においてくる胆管ステントと鼻から体外に出す経鼻胆管ドレナージチューブがあります。(左模式図のピンクは胆管ステント)

膵管ドレナージチューブには体内においてくる膵管ステントと鼻から体外に出す経鼻膵管ドレナージチューブがあります。(右模式図のピンクは膵管ステント)

胆嚢ドレナージチューブには体外に出す経鼻胆嚢ドレナージチューブがあります。(左模式図のピンク)

下部胆管の狭窄(矢印)による黄疸の治療のため、胆管用金属ステントを留置

経皮経肝胆道ドレナージ

石や腫瘍などによって胆汁の流れが悪くなっていて、しかも、内視鏡を使ったドレナージができない場合や、その後の治療に必要なルートを確保する場合に行う方法です。腹部エコーをみながら安全に、肝臓を貫いて胆のうや胆管に向かって、体外から針を刺します。針穴からガイドワイヤ(軟らかい針金)をいれて、針を抜いたあとガイドワイヤに沿わせてチューブを胆のうや胆管にいれます。胆汁は体外にでる外瘻チューブの一種です。
急性胆のう炎の場合に胆のうにドレナージチューブを留置することもありますが、チューブを置かずに、胆のうを刺した針で胆汁をできるだけ吸い取って、そのまま針を抜くこともあります(経皮経肝胆のう胆汁吸引術)。

ピンクは経皮経肝胆管ドレナージチューブ
経皮経肝胆管ドレナージチューブから、胆管造影を行った写真

内視鏡的胆管結石せっ石術・内視鏡的膵石せっ石術

内視鏡を使って胆管結石や膵石を取り出す方法です。内視鏡と採石具を使って、十二指腸乳頭部から石を取り出します。石を取り出すためには、小さな出口をひろげる必要があります。その方法には高周波電流(電気メス)で出口を数mm切開する方法(内視鏡的十二指腸乳頭括約筋切開術)と、出口で風船を膨らませることでおしひろげる方法(内視鏡的乳頭バルーン拡張術)があります。出口をひろげたあとで、バスケットカテーテルなどの採石具を使って、石を十二指腸へ取り出します。
大きな石は胆管内で砕いて小さくしてから取り出します。

胆管内の結石をバスケットカテーテルで捕捉(黄色矢印が胆管結石)

超音波内視鏡ガイド下胆管ステンティング

超音波内視鏡を使い、十二指腸から胆管に向かって針をさして、新しいトンネル(瘻孔)を作る方法です。膵がんなどによる胆管閉塞、黄疸がある場合で、通常の胆管ドレナージが困難なときに行うことができます。これはまだ、一般的な治療ではなく、最近、新たに試みている方法です。

針をさしてのう胞内にガイドワイヤを入れた写真

超音波内視鏡ガイド下膵のう胞ドレナージ

急性膵炎後などに、膵周囲に大きなのう胞(水のたまった袋)をつくることがあり、のう胞による圧迫感があったり、バイ菌がついて熱がでたり、どんどん大きくなったりする時には、のう胞内の水を抜く治療をします。
超音波内視鏡ガイド下胆管ステンティングと同じ要領で、胃のうしろにある、膵のう胞に向かって、胃から針を刺します。針穴からガイドワイヤをのう胞内にいれて、胃からのう胞内にチューブを置きます。チューブは体内においてくるものと、鼻から体外にだすものがあり、状況によってどちらか一方、または両方のチューブを置きます。

のう胞内に内瘻チューブ、外瘻チューブを置いた写真

内視鏡的十二指腸乳頭切除術

胆管と膵管の出口である十二指腸乳頭部にできた腫瘍(良性腫瘍)に対して、内視鏡を使って腫瘍を切除します。内視鏡の先から輪になった針金(スネア)をだして、腫瘍の首根っこの部分にかけてしばります。
次に針金に電気を流して焼き切ります。焼いた後の傷が治るときに、胆管と膵管の出口がふさがらないようにチューブ(胆管ステントと膵管ステント)をおいておきます。
チューブは1週間後に抜きます。

  • 右上:十二指腸乳頭部腫瘍(良性腫瘍)切除前に膵管にガイドワイヤをおく
  • 左下:十二指腸乳頭部腫瘍にスネアをかけて高周波電流で焼き切る
  • 右下:切除した腫瘍を回収したあとに胆管と膵管にステントをいれる

内視鏡的胃・十二指腸ステンティング

膵がんが進行すると、すぐそばにある胃の出口あたりから十二指腸にがんがひろがり、腸がつぶれて、食べ物が流れなくなってしまうことがあります。狭くなった消化管に食べ物が流れないように、外科手術で胃と小腸をつなぐバイパス術もありますが、すでにがんは進行した状態であることが多く、手術に耐えられなかったり、手術後の回復がおそくなったりして、結果的に手術をした意義が薄くなってしまうことも時々あります。そこで、内視鏡を使って、十二指腸の狭いところに金属製のチューブ(十二指腸金属ステント)をいれて、食べ物の流れ道を確保する方法があります。この方法だと、体力が弱っている状態でも、それ程負担にはならずに治療ができ、うまくいけば翌日から食事ができるようになります。

内視鏡画面(左上)、レントゲン(左下)のいずれでも十二指腸が狭くなっている(矢印)。
内視鏡とレントゲンをみながら、十二指腸金属ステントを狭い部分に留置した直後、ステントはまだ潰され気味である(右上、右下矢印)。

自己拡張力のあるステントは次第にひろがって、食べ物の流れを妨げない、十分な管腔が保たれた(矢印)。

抗がん剤治療

胆道がん(胆のうがん、胆管がん)、膵がんにおいて、手術には危険を伴う場合や手術ではとりきれない場合に行います。がんの進行をくい止めることが目的です。現在、おもな抗がん剤にはジェムザールとティーエスワンがあります。

副作用

悪心、嘔吐、倦怠感、食欲不振、発熱、発疹、骨髄抑制(血液が減ること、菌やウイルスなどに対する抵抗力が落ちたり、貧血になったり、血が止まりにくくなったりします)などがありますが、一般的には、外来治療で普通に日常生活を送っていただける程度以下の副作用です。副作用が強く出た場合は一時抗がん剤を中止したり減量したりします。

塩酸ゲムシタビン(ジェムザール)

週1回の点滴を3週続けて、4週目は休みです。これを1クールとして繰り返します。毎回、血液検査、副作用の有無を確認してから治療します。初めに吐き気止めを点滴または注射した後に30分かけてジェムザールを点滴します。
点滴が終わったら帰宅です。

テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(ティーエスワン)

1日2回(朝夕食後)に内服します。4週間続けて内服したら2週間休みです。
これを1クールとして繰り返します。副作用の有無を調べるために、時々、血液検査を行います。

ジェムザールの実際
ティーエスワンの実際

放射線治療

放射線治療専門の放射線科医のもとで、放射線をがんにあてます。主に胆管がんに行い、体外の数方向から放射線をあてることで、がん部に多くの放射線があたり、正常部にあたる放射線量を減らすことでよけいな放射線障害を防ぎます。
がんの場所によっては動体追跡照射といって、呼吸性に移動するがんに対して、放射線の照射野に入った時だけ放射線をあてて、正常部にあたる放射線量をへらす方法をとることもあります。