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肝臓癌

肝臓がんとは?

肝臓がんは肝臓にできた悪性腫瘍であり、肝臓の細胞から発生した原発性肝がんと他臓器にできたがんが転移した転移性肝がんに分けられます。
原発性肝がんはほとんどが肝細胞から発生する肝細胞がんであり、胆管細胞がんがそれに続きます。転移性肝がんは大腸がんや胃がん、膵臓がんなどが血液やリンパの流れに乗って転移するもので、治療法は原発により異なります。

肝細胞がんの疫学

肝がんの死亡者数は減少傾向にある

日本の疾患別の死亡者数は悪性新生物が第1位であり、肝がんは第5位に位置しています。近年は、肝発がん高リスク集団が減少しているのと同時に、治療法も進歩してきたため減少傾向にあります。

  • 肝がんの年齢調整死亡率は男女とも2002年ころをピークに減少しています。
  • 肝がんの大きな原因であるウイルス性肝疾患が制御されてきていることに加え、診断・治療法が進歩していることが要因とされています。
  • 一方で、肝炎ウイルス排除後や肥満・糖尿病患者など囲い込みが困難な集団からの発がんが問題となっています。

肝細胞がんの成因は大きく変わってきている

肝細胞がんの原因は2000年ころまではB型肝炎とC型肝炎といったウイルス性肝炎が主たる原因でしたが、2000年以降は非ウイルス性が増加してきています。また、発がん年齢も高齢化しています。

  • C型肝炎がインターフェロン治療や直接作用型抗ウイルス薬(DAA)により治療可能となり、C型肝炎からの発がんは減少傾向にあります。しかしながら、C型肝炎ウイルス排除後の発がんが問題となっています。
  • B型肝炎も抗ウイルス薬(核酸アナログ剤)により制御が可能となっていますが、依然として一定の発がん要因となっています。
  • 非ウイルス性の発がんは近年、増加の一途をたどっており、その多くが肥満や糖尿病を背景とした代謝機能障害関連脂肪肝疾患(MASLD)であるといわれています。また、アルコール関連肝障害も重要な問題です。

肝細胞がんの診断

肝臓は沈黙の臓器といわれており、発がんしてもほとんど症状は出現しません。そのため、下記のような検査によって肝細胞がんの診断を行います。
また、肝細胞がんは根治的治療後も高率に再発するため、治療後も定期的な検査で経過を観察することが重要です。

腫瘍マーカー

  • AFP:
    急性肝炎や慢性肝炎、肝硬変でも上昇しますが、著明に高い時には肝細胞がんを疑います。経時的変化の追跡は経過観察に有効です。
  • AFP-L3:
    AFPには糖鎖が結合しており、肝細胞のがん化に伴い構造が変化します。L3分画は肝細胞がんに対する特異性が高く、陽性例は悪性度が高く予後が不良とされています。
  • PIVKA-II:
    肝細胞がんに対する特異性が高く、門脈浸潤の予測因子であるとされています。やはり高値例は予後が不良とされています。ワルファリンや抗生物質、黄疸などにより偽陽性を示します。

肝細胞がん診断において各々の腫瘍マーカーはがんがあっても陽性にならない場合があるため,複数のマーカーを組み合わせて診断の精度を高めます。

超音波検査

超音波検査は慢性肝炎、肝硬変における肝がんのスクリーニング検査として施行されています。他の画像検査と異なり、放射線被ばくや造影剤による腎障害などの副作用が無く苦痛を伴わないことから、画像検査の第一選択です。また、超音波用の造影剤(ソナゾイド®)の登場により、腫瘍の質的診断が可能となったことで日常診療においてなくてはならない検査です。また、この造影剤は腎機能障害や気管支喘息の方にも問題なく使用できることから安全性も高い検査です。

1)Bモード

やや境界不明瞭な低エコー(黒っぽい)腫瘍として観察されます。

2)動脈優位相

肝細胞がんは強く造影され、血流の豊富な腫瘍であることが分かります。

3)クッパー細胞相

正常な肝臓にはクッパー細胞(肝臓の貪食細胞)に造影剤が取り込まれ高エコーを示し(白くなり)ますが、肝細胞がんの部分はクッパー細胞が存在せず黒く抜けて観察されます。

4)再注入

黒く抜けた部分に目標を絞り、造影剤を再度投与することにより、同部の血流評価がリアルタイムに可能です。

CT検査

X線を使用して体の断層像を作り出す検査です。肝臓は動脈と門脈の二重血管支配となっています。正常な肝臓は主に門脈から血液が供給されていますが、肝細胞がんは動脈からのみ血流を受けるようになります。その性質を利用して、造影剤注入後数秒~数分経過した後に数回CTを撮像します。肝細胞がんでは動脈や門脈が造影されるタイミングで撮像することにより腫瘍の血流動態が評価可能となります。

MRI検査

強い磁場と電磁波を使用して体の断層像を作り出す検査です。CTと異なり放射線被曝などの問題がなく、組織のコントラストが優れていることが特徴です。骨などの影響も受けにくいため、病変部と正常組織の違いが分かりやすいことが特徴です。また、肝細胞特異性造影剤(EOB・プリモビスト®)を用いたMRIは血流動態に加えて肝細胞機能も評価可能であり、早期の肝細胞がんを検出可能です。

肝細胞がんの治療

肝細胞がんの治療はこの20年で劇的に進歩しました。当院では、外科的治療から内科的治療、放射線治療までさまざまな治療を組み合わせて治療を行っています。
特に、近年は新規治療法や治療薬の開発、治療機器の進歩など肝臓がんの治療を取り巻く環境は大きく変化しています。個々の患者さんに最適な治療を提供します。

外科的治療(肝切除・肝移植)

最も根治的な治療法であり、近年その安全性は向上しています。肝臓に腫瘍が限局しており、3個以下が良い適応とされています。また、肝臓の機能がかなり低下し、腹水や黄疸などの症状が出ている状態(非代償性肝硬変)を伴う肝細胞がんの中で、ミラノ基準(脈管浸潤なし・肝外転移なし、腫瘍径5cm以下単発または、3cm以下3個以内)や5-5-500基準(腫瘍径5cm以内かつ腫瘍数5個以内かつAFP 500ng/mL以下)に合致するものは肝移植も考慮されます。

穿刺局所療法(ラジオ波焼灼療法・マイクロ波焼灼療法)

穿刺局所療法には早期肝がん(腫瘍径3cm以下3個以内)に対して行われます。ラジオ波焼灼療法(RFA)、マイクロ波焼灼療法(MWA)が一般的です。医療機器や造影剤などの画像技術の進歩が著しく、これらの技術が局所治療の安全性と確実性に大きく貢献しています。別の画像情報であるCTやMRIのイメージをリアルタイムのエコー画像と重ね合わせるFusion imagingなども用いながら治療を行っています。

肝動脈化学塞栓療法(TACE)

肝動脈化学塞栓療法(TACE)は中等度進行肝がん(腫瘍数4個以上の手術不能かつ穿刺局所治療の対象外)に対して行われます。当科ではCTアンギオ装置を用いて、細かい血管を同定し、腫瘍のみ選択的に治療を行うことで、肝備能を温存させるTACEを心がけています。従来のリピオドールと多孔性ゼラチン粒を使用したconventional TACE(c-TACE)のほか、症例に応じて薬剤溶出性球状塞栓物質を用いたDEB-TACE、バルーンカテーテルを用いたB-TACEなどを行っています。最近では後述する薬物療法と組み合わせて治療することもあります。

1)腹部血管造影

肝動脈より造影剤を注入しながら、肝臓の血管を映します。肝細胞がんは黒い染みのように浮き上がってきます。

2)TACE

肝細胞がんを栄養する血管を同定します。その血管まで細いカテーテルを進め、抗癌剤と塞栓物質を注入します。

薬物療法

これまで有効な治療が少なかった進行肝がん(TACEでのコントロールが困難な状態、血管への侵入や遠隔転移がある状態)に対して、近年、薬による治療(薬物療法)が飛躍的な進歩を遂げています。
「免疫チェックポイント阻害薬」や、がんの血管を阻害する「分子標的薬」などを組み合わせた複合免疫療法が登場し、以前の治療薬に比べて高い治療効果(がんが小さくなる,あるいは消える割合)が期待できるようになり、長期にわたって病状をコントロールできる患者さんが増えています。
また、最初は手術や焼灼療法が難しかった進行がんでも、薬でがんが縮小・消失し,再び外科切除や局所治療が可能になるケース(コンバージョン治療)が出てきています。当科では、外科や放射線科と協力し、薬物療法の経過中に適切なタイミングで外科切除や放射線治療などを組み合わせる「集学的治療」を行い、治療成績の向上に努めています。

肝臓の機能や持病、仕事などのライフスタイル、期待される効果と副作用のバランスを考慮し、複数の薬剤の中から最適な選択肢を提案します。また、複合免疫療法が適さない場合や肝機能が十分に保たれていない症例などでは、カテーテルを用いて肝臓に直接抗がん剤を注入する「肝動注化学療法(HAIC)」を検討することもあります。

放射線治療

他の局所療法が困難な症例に対する定位照射のほか、門脈腫瘍栓や遠隔転移例に対する姑息的照射を行っています。放射線治療科と協力し治療を行っています。

診療実績