第26回 日本門脈圧亢進症学会総会 ~門脈学の維新~

第26回 日本門脈圧亢進症学会総会

THE 26TH ANNUAL MEETING OF THE JAPAN SOCIETY FOR PORTAL HYPERTENSION

企画趣旨・司会のことば

シンポジウム1

門亢症に対するIVR治療の進歩~難治例・難渋例に対する工夫~

司会 小泉 淳 東海大学医学部 画像診断学
   清末一路 大分大学医学部 放射線医学講座

(司会のことば)
静脈瘤、脾腫・脾機能亢進、肝性脳症、胸腹水など門亢症の病態は多岐にわたり、それぞれに対するIVR治療は近年目覚ましい進歩を遂げている。テクニックの向上のみならずデバイスの発達が著しいなかで、病態および血行動態が複雑であるが故に、治療方針を決めかねるケースや治療に難渋するケースも少なくない。本シンポジウムでは、専門領域(放射線科・内科・外科)の垣根を越えて各施設独自の工夫・取り組みについて議論していただきたい。

シンポジウム2

門亢症を伴う肝硬変に対する薬物療法の進歩~腹水・脳症・血栓など~

司会 持田 智 埼玉医科大学 消化器内科・肝臓内科
   吉治仁志 奈良県立医科大学 内科学第三講座

(司会のことば)
肝硬変患者の予後は、門亢症に起因する合併症に対する治療技術の発展で、格段と向上している。特に、薬物療法の進歩は目覚ましい。従来、入院加療を余儀なくされた症例が外来で管理できるようになり、患者のQOLも著しく改善された。本シンポジウムでは、腹水、肝性脳症、門脈血栓症などに対する薬物療法に関して、新規薬物登場前後での治療成績を比較し、最新の知見を報告いただくことで、今後の課題を明確することを目指す。

シンポジウム3

門亢症の病態解明~基礎から臨床へ~

司会 鹿毛政義 久留米大学 先端がん治療研究センター
   河田則文 大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学

(司会のことば)
門脈圧は門脈系の血管抵抗と血流量により規定されるが、脾臓や側副血行路、血栓症など様々な要因により修飾される。肝内血管抵抗に関する研究では類洞壁細胞の役割やそれを制御するET、NOなどの血管作働性因子が明らかにされてきたが、門脈自体の血管バイオロジーは未解明であり、脾臓の微小循環や線維化についてはようやく解析が端緒についた。側副血行路の血管新生やhyperdynamic stateのバイオロジーについても検討が必要である。基礎的解析を基とする門亢症の治療法や診断法の開発は患者の予後を大きく左右するため喫緊のunmet medical needsの一つであろう。本シンポジウムではこれら門亢症の病態解明に関わる諸問題について、臨床応用に直結する演題を期待したい。

合同シンポジウム1 (第21回肝不全治療研究会)

門亢症に伴う慢性肝不全の臓器連関~脳・腎・腸~

司会 寺井崇二 新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野
   日高 央 北里大学医学部 消化器内科学

(司会のことば)
肝臓は代謝や免疫の中心臓器であり、しかも門脈を介して全ての消化器と網内系臓器である脾臓と繋がっている。多様な機能を有し解剖学的にも人体の要にある肝臓が障害されると、種々の因子が相互に複雑に関連し、経時的に動的かつ多様な病態を形成する。近年、肝臓と他臓器の密接な関連性が注目され、その解明こそが新たな肝不全治療の開発につながるものと考えられる。本シンポジウムでは、肝不全の病態を全身疾患として捉え、そのトータルマネージメントを目指して、基礎および臨床の両面から大いに議論する予定である。

合同シンポジウム2 (第8回脾臓研究会) 

脾機能亢進に伴う血球減少に対する治療戦略~薬物 vs IVR vs 手術~

司会 波多野悦朗 兵庫医科大学 肝胆膵外科
   石川 剛 山口大学大学院医学系研究科 消化器内科学

(司会のことば)
肝硬変患者の血小板減少には種々の機序が関与しているが、「脾腫・脾機能亢進」と「肝でのトロンボポエチン産生低下」がその主たる要因と考えられている。以前から、脾臓摘出術と部分的脾動脈塞栓術(PSE)の功罪について議論されてきたが、「待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症」を対象として2015年にトロンボポエチン受容体作動薬が登場し徐々にその使用経験が報告されつつある。特殊技術を要さない内服治療に注目が集まる今、薬物、IVR、手術、それぞれの観点から、血小板減少に対する治療目的、適応を明らかにしたうえで、メリット・デメリットについて議論し合うシンポジウムにしていただきたい。

合同シンポジウム3 (第22回BRTO研究会)

新しい塞栓物質とデバイスの登場によるBRTOの新たな展開

司会 於保和彦 一般財団法人 医療・介護・教育研究財団 柳川病院 内科・消化器内科
   小林 薫 兵庫医科大学 放射線科

(司会のことば)
金川先生によりBRTOが報告されてから23年になる。詳細な血行動態の解明、様々な手技の改良、デバイスの進歩もあり、国内では広く普及している。昨年、ようやくEthanolamine oleate(EO)によるBRTOが保険収載されたが、近年ではPARTOやCARTOも韓国や米国を中心に積極的に行われている。塞栓物質についてもEO以外にNBCA、Foam、ゼラチンスポンジ、あるいはEOにゼラチンスポンジを混和させるなど様々な方法が開発されている。このシンポジウムでは、各施設で行われているBRTOの現状を報告していただき、新しい塞栓物質やデバイスの可能性について討論したい。

パネルディスカッション1

門亢症と肝移植

司会 橋爪 誠 北九州中央病院
   江口 晋 長崎大学大学院 移植・消化器外科学

(司会のことば)
現在、本邦での肝移植保険適応は「肝不全を伴う門亢症」である。しかし、欧米では門亢症治療の最終手段として、肝移植が施行されているのも事実である。広範門脈血栓の症例に対する肝移植の難易度は高く各施設で様々な工夫がなされているが、生体肝移植ではより一層その難易度が増す。さらに門脈圧は、特に部分肝移植グラフトへの影響が大きく、そのmodulationも課題となっている。本シンポジウムでは、門亢症に対する肝移植の適応、手術での問題点(門脈血栓、閉塞例等)とその克服法(脾摘・シャント・薬剤等)・成績等を議論して頂き、臨床へのフィードバックを目指したい。また、門亢症関連病態(肝肺症候群、胃食道静脈瘤など)の肝移植前後での変化に関する情報も共有できれば幸いである。

パネルディスカッション2

門亢症に対する診断モダリティの進歩

司会 飯島尋子 兵庫医科大学 内科学肝胆膵科
   中島 淳 横浜市立大学大学院医学系研究科 肝胆膵消化器病学教室

(司会のことば)
門亢症の病態および合併症の評価には組織診やHVPG、内視鏡やIVRなど侵襲的検査がgold standardとされてきたが、近年、新規血清マーカーに加え非侵襲的診断法として超音波あるいはMRエラストグラフィが普及しつつあり、その診断能の向上は著しい。これらの診断情報は肝予備能や予後、食道胃静脈瘤診断、発癌リスクとも関連性が深いと報告されている。本パネルディスカッションでは、門亢症の病態解明、診断、治療さらには効果判定に各種モダリティがいかに迫ることができるか、それらの最新情報について議論していただきたい。

パネルディスカッション3

抗ウイルス療法は門亢症を改善し得るか?~DAAs・核酸アナログ~

司会 竹原徹郎 大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学
   日野啓輔 川崎医科大学 肝胆膵内科学

(司会のことば)
抗ウイルス療法の飛躍的な進歩により、HBVおよびHCVが制御可能な時代が到来した。特にC型肝炎においては各種DAAによって95%以上のSVRが得られ、今後HCV陽性患者は激減することが予想される。しかし、肝疾患としての病態はウイルス排除ですべて解消されるわけではなく、発癌とともに「門亢症」が臨床的問題として残るのは言うまでもない。肝線維化や門亢症の可逆性を示す報告がみられる一方で、個々の症例に目を向けるとそれらの残存・増悪、さらには非代償性肝硬変への移行例が散見されるのも事実である。本パネルディスカッションでは、抗ウイルス療法後の門亢症の変化にフォーカスをあて、様々な観点(血清学的・画像診断学的・組織学的)から討論していただきたい。

ワークショップ1

門亢症が生命予後に及ぼす影響~門亢症治療は予後を延長し得るか?~

司会 小原勝敏 福島県立医科大学 消化器内視鏡先端医療支援講座
   吉田 寛 日本医科大学 消化器外科

(司会のことば)
食道胃静脈瘤、シャント性脳症、脾機能亢進症、門脈血栓、胸腹水など門脈圧亢進によって生じ得る病態は多岐にわたり、肝がん同様に肝硬変患者の予後規定因子になり得ることは想像に難くない。近年、薬物療法・内視鏡治療・IVR治療・外科手術など様々な治療法が目覚ましく進歩しており、門亢症患者の予後が著しく延長していることを実感する。本ワークショップでは、門亢症および門亢症治療と生命予後の関連性に注目し、種々の門亢症治療の目指すべき到達点に関して、10年後・20年後を見据えた有意義なディスカッションの機会になれば幸いである。

ワークショップ2

非ウイルス性肝硬変時代の門亢症~ウイルス性との共通点・相違点を中心に~

司会 國土典宏 NCGM国立国際医療研究センター 外科
   竹井謙之 三重大学大学院医学系研究科 消化器内科学

(司会のことば)
ウイルス性肝炎に対する治療が各段に進歩した今日、アルコール性およびNASH/NAFLDを含む非ウイルス性肝硬変への関心がより一層高まっている。わが国でも非ウイルス性肝硬変を背景とした肝発癌症例が数多く報告されるようになってきている一方で、線維化進展予測、肝癌スクリーニング、予防・治療戦略の確立など、臨床的課題は山積している。代謝病態と肝障害の関連、細胞ストレス応答、腸内細菌と自然免疫、臓器相関、サルコペニアや細胞老化の関与、肝線維化進行および発癌メカニズムの解析、非侵襲的診断へのアプローチや実験的治療介入など、非ウイルス性とウイルス性の共通点・相違点に焦点をあてて様々な観点からご検討いただき、現況と今後の展望についてディスカッションしていただきたい。

ワークショップ3

類洞閉塞症候群(SOS)の病態と治療

司会 村島直哉 国家公務員共済組合連合会 三宿病院 消化器科
   緒方俊郎 社会医療法人 聖マリア病院 外科

(司会のことば)
類洞閉塞症候群(sinusoidal obstruction syndrome: SOS)は、類洞内皮細胞障害とそれに続く類洞の非血栓性線維性狭窄や閉塞による循環障害、さらにはzone2~3の肝細胞壊死および線維化による門脈圧亢進がその主たる病態とされる。その危険因子や診断基準に関する報告は散見されるものの、未だ確立した予防法や治療法がないのが現状である。一方、化学療法の進歩により各種癌患者の長期生存が期待できるとともに、近年SOS症例に遭遇する機会が明らかに増えてきたことを実感する。又、肝移植、骨髄移植後にも、SOSが生じることがあり、重症化例では、致命的となる。このワークショップでは、SOSおよびその類似症例を持ち寄り学会員としての知識を深めることを目的とし、各施設での経験や知見などを御発表いただきたい。顕性門脈圧亢進症を有さない症例、たとえば化学療法によるSOS類似の肝障害症例、あるいは血栓性の肝障害例なども応募していただければ幸いである。実際の治療に関して何らかの方向性が得られるようなワークショップにしたい。

ワークショップ4

門亢症と栄養・運動療法~サルコペニア・フレイルの観点から~

司会 佐々木 裕 市立貝塚病院
   日浅陽一 愛媛大学大学院 消化器・内分泌・代謝内科学

(司会のことば)
肝硬変患者では蛋白エネルギー低栄養(PEM)やサルコペニア(筋肉量減少)などが一連の病態として認められ、また高齢者を多く含む本疾患においてはフレイル(虚弱)を呈する。特に門亢症を伴う非代償性肝硬変患者においては、これらの栄養および運動障害が生命予後やQOLの低下と密接に関連していると報告されている。近年、栄養療法・運動の介入がエビデンスとともに推奨されつつあるが、そのアセスメントの方法と治療の実際は様々であり、栄養士、看護師をはじめ多職種の連携が必要である。本ワークショップでは、門亢症に対する今後の栄養・運動療法のアセスメントの方法、治療指針について議論したい。

ワークショップ5

門亢症と循環動態~門脈系循環・全身循環~

司会 近森文夫 高知赤十字病院 外科
   今井康陽 市立池田病院 消化器内科

(司会のことば)
門亢症は、肝内血管抵抗上昇だけに限局する病態ではなく、全身内臓系循環亢進状態(hyperdynamic circulation)を伴うsystemic diseaseと捉えるべきである。門亢症の成因であるOutflow blockとIncreased inflowには、NOやエンドセリン、さらにはR-A-Aシステムなどが密接に関与しており、その病態は極めて複雑と言える。近年デバイスの発達および診断モダリティの進歩により、門亢症における門脈-脾静脈系循環のみならず全身循環に関する情報が多く得られる時代が到来した。各施設での知見を忌憚なくご発表いただき、門亢症特有の循環動態に関する理解を深めるワークショップとしたい。

ビデオワークショップ1

異所性静脈瘤治療の工夫

司会 松村雅彦 天理市立メディカルセンター 内科
   松岡俊一 日本大学医学部 消化器・肝臓内科

(司会のことば)
食道胃静脈瘤は、出血状況と血行動態および肝病態に基づく治療方法がほぼ確立されてきた。一方、食道胃静脈瘤以外に分類されている異所性静脈瘤については、その頻度が門脈圧亢進症全体の1%に満たないため症例数の蓄積が乏しく、治療方法に関して一定の見解が得られていない。発生部位や病態の違いから、内視鏡治療、IVR治療、外科治療の様々な手技が、またはそれらのコンビネーション治療が症例・施設ごとに選択され行われているのが現状である。本ビデオワークショップにおいて、異所性静脈瘤の診断および治療アプローチにつき各施設の工夫などを含め、専門領域の垣根を越えた活発な討論がなされることを期待している。

ビデオワークショップ2

食道胃静脈瘤治療とEUS

司会 吉田智治 小倉記念病院 消化器内科
   入澤篤志 獨協医科大学医学部 内科学(消化器)講座

(司会のことば)
食道胃静脈瘤治療において、その形態や局所の血行動態、さらには門脈-脾静脈系の血行動態を把握することは安全かつ確実な治療を遂行するうえで極めて重要である。超音波内視鏡(EUS)は、非観血的・非侵襲的に食道および胃壁内外の側副血行路の描出が可能であり、個々の症例に見合った治療法を的確に選択する一助となって治療成功率を高めるオプションになり得る。本ビデオワークショップでは、EUSのテクニックや臨床での活用法などに関する活発なディスカッションを期待したい。

ビデオワークショップ3

手術(シャント造設術を含めて)

司会 太田正之 大分大学国際教育研究推進機構 国際医療戦略研究推進センター
   谷合信彦 日本医科大学武蔵小杉病院 消化器外科

(司会のことば)
食道胃静脈瘤に対する手術療法は1900年頃に開始され、1980年代まではわが国において静脈瘤に対する主な治療法として広く行われていた。その後内視鏡的治療の台頭により、手術療法は現在門亢症患者の限られた症例にのみ施行されている。その適応は内視鏡的治療やIVRで対処困難な食道胃静脈瘤や脾機能亢進症、Budd-Chiari症候群などであるが、現在も臨床上手術療法の必要な症例は存在しその重要度は必ずしも低下していない。本ビデオワークショップでは腹腔鏡下Hassab手術や脾臓摘出術、Budd-Chiari症候群や肝外門脈閉塞症に対する手術、デンバーシャントなどのビデオをご提示いただき、その手技と成績について議論したいと考えている。